
給油所
藤田哲史
さみだれて水族館に魚たち
緑蔭や脇にはさみて本かたき
たゆたへるほどの泳ぎや考へず
白牡丹熱ひくき子でありにけり
夏痩や最中に文字のうつすらと
もの食ふや網戸ごしなる人の声
帰省以後朝顔の花おしひらく
帰省午後庭掃きはじむすぐをへぬ
夏に入るや松毬灼けて砂利の上
秋簾言葉なければはにかみし
鍵束の冷えてをりけり萩の雨
我も汝も秋冷のもの汝を抱く
末枯や丸き眼鏡のコルビュジエ
天の川京都へとつてかへしけり
ひよんの実や力の尽きし箒星
かるかやや飛行機待つに談笑す
給油所に犬洗はれし芋の秋
落葉して猫太りしか抱いてみむ
いちやうもみぢ踏みても路のかたさなる
焼藷や雲一塊が屋根の上
身に入むや駅舎の椅子のなべて白
うら寒の柱時計の窓に海
マンボウのうすきくちびる雪もよひ
朝寒のブーンといひしコンピュータ
冬の虹装丁の革やはらかき
水涸れて彼らはこはいもの知らず
先生と診察室に夜寒かな
ボブスレーひよいと飛び乗り身を収む
三人が傾きボブスレー曲がる
山は春ブロッコリーの茹で上がり
百敷
生駒大祐
電柱の肌安らかに花見酒
桃の花異国の巨人に靴頂く
少し冬畳に体投げ打てば
蛇穴を出てバナナパフェ崩壊す
大樽の崩壊せしを秋雨かな
ストローの片寄りがちや秋の虹
秋の夜を金属球の転がりぬ
冷まじや門番の鼻透き通る
蝶老ひにけり一塊のマーガリン
白鳥に脚の一対古書の町
蟋蟀や演出家肩より笑う
秋の田に四本足の梯子かな (以上07)
紫木蓮教会へ椅子運び込む
咲くやうに抹茶こぼるる今朝の秋
凩や菓子盆に菓子あふれたる
吸ひ物の実のどつと来し寒暮かな
ボーダーの幅広々とカーディガン
焼売の箱折り畳む卒業子
民宿の襖明るき春の雨
秋暑なり魚の尾魚を隠したる
覆はれて社殿の崩さるる立夏
飼育員連れ立ちて去る秋暑し
お屋敷の包まれてゐる刈田かな
秋の風朱墨と墨の隣りたる
月裏を日の過ぎゆける荏胡麻かな
ことさらに触れる手おほき白障子
ほうと言ふマフラー越しや聞こえざる
桜餅肘つけば書にさはりたる
網棚に雑誌伏せある夜寒かな
春の手をあぶらねんどの汚したる (以上08)
後
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